書籍、洋楽、洋画の感想Blog

読んだ本、買ったCD、観た映画の備忘録

人体600万年史 <下>

-適者生存、文化的進化に適応を迫られる現代人-

 

旧石器時代の終わりから現代まで、農業の始まりから産業革命

迎えるまで人類の体に大きな変化はない。旧石器時代の体のまま

現代を暮らしていくとどのような影響があるのか、そして未来へ

生き残るためどのような選択をすべきか、を下巻では説いている。

 

現代人のパラドックス


農業の発展による集団生活、産業革命による都市化が進む。食料

を労せずして手に入れる。過去からのどの時代より文化的で、

寿命が伸び、幸福な時代を送っている。しかしあまりに急激な環

境変化に対し、人体の進化のスピードは緩慢で、供給過多の食料

にエネルギー収支はプラスへ振れ続け、脂肪を蓄積し続ける。

 

ミスマッチ病


世界中の人が、過去に例にない割合で太っている。太ることの

説明に、食事以外で重要な要因がいくつもある。遺伝子、睡眠、

ストレス、運動などである。環境変化に身体の適応が追いつか

ないことにより、さまざまな健康問題が生まれている。

結果、2型糖尿病、心臓疾患、がんなどが深刻化している。

これらを「ミスマッチ病」と呼んでいる

 

ディスエボリューション


旧石器時代に獲得した倹約遺伝子が、飢餓状態を切り抜けるべく

脂肪を蓄積する。これが現代において健康を損なうよう作用して

いる。豊かな文化的生活とのトレードオフである。この悪循環を

「ディスエボリューション」と呼んでいるが、進化の反対、退化

というのでなく、進化を妨げること、進化の副作用といった意味

になるだろうか。


未来からの歴史俯瞰


上巻で述べた、われわれホモ・サピエンスが唯一のこったヒト種、

というのは、あくまで今の時代の視点である。何百万年後に隆盛

を誇っているかもしれない他の種族からは、この時代は裕福病に

よって滅びたヒト属ヒト種が世界中に溢れていた、歴史上極めて

不健康な時期である、と説明されているかもしれない。

 

未来へのアプローチ


進化の発展、適者生存に頼るのではどうしようもなく、医学的にも

病気への直接的な対処法では、根本的解決には程遠い。

生物医学への投資、未成年者への教育と規制、など語られているが

ディスエボリューションを止めミスマッチ病にならないため、

あなたは何をしますか?未来はあなた次第ですよ、と問いかけて

最後を結んである。

 


(2015.10.31)

 

人体600万年史 <上>

-サルからヒトへの進化の過程と、我々の特性とは-

 

類人猿と現生人類、つまりサルとヒトの間の600万年を上下2巻、

全550ページにまとめた内容。人類の歴史を身体的進化から、

文化的進化の影響までを論じている。

 


唯一生き残ったホモ種


チンパンジーと人類がゴリラと袂を分かったのが約900万年前で、

5~800万年前に人類とチンパンジーの系統が分岐した。

そこから類人猿のアウストラロピテクスの系統から、ヒト属に分類

されるさまざまなホモ種が世界各地に散らばり、適応能力に優れた

ホモ・サピエンスが20万年前に生まれ、他ホモ種が消えていった。

かのネアンデルタール人は、ごく近いいとこだが祖先ではない。

 

なぜ生き残ったのか?


厳しい気候変化、環境への適応に対処すべく獲得したものがある。

より多くのエネルギーを備蓄できること、すなわち大量の脂肪を

身体に備える能力こそ、現生人類に特別にもたらされた特性である。

 

急激な文化的進化


そして石器時代が約1万年前に終わり、各地で農業が始まる。

食料貯蔵と集団生活を経て人口を増やし、やがて産業革命が興る。

上巻はこのあたりまで。

 

下巻では文化的進化と裕福病の話、現生人類の未来を説く。


(2015.10.28)

幻のアルバム 失われた音を求めて

-現役を続けているからこそ日の目を見た『Smile』と『Get Back』-

 

もし完成して発売に漕ぎつけていたら、という様々なアーティストの

未発表アルバムを取り上げた内容。ある作品が世の中に出ていくには

いろんなハードルを越えてるということ。

 


1942年6月生まれの英米ベーシスト


特に有名なのが『Smile』と『Get Back』。

Brian Wilson,Paul McCartney, 2人は、泉のように湧き上がる創作

意欲にも拘わらずアルバム完成を放棄して、バンドを離れ隠遁生活

に入ってしまった。偶然この頃は似たような生き方をしていた。

 

製作再開、オリジナルへの回帰


21世紀に入っても音楽活動を止めなかった2人は、偶然ほぼ同時期に、

当時のマテリアルを使用/今のテクノロジーで再録、の違いはあるが

未完のまま放ったらかしてた作品を仕上げて、発表に漕ぎつけた。

当時2人の頭の中にあった音は、30年以上経ってもずーっと忘れれずに

残っていたわけだ。

ノスタルジー?後悔?執念?Spector版の要らん音を消したかったから?

 


とすれば、長く現役でいられることも天才の証の一つかもしれない。

 

(2015.10.27)