書籍、洋楽、洋画の感想Blog

読んだ本、買ったCD、観た映画の備忘録

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた

 

 

 

体調が悪い時や怪我をした時、あるいは病気になった時、病院で診察を受けて薬局で処方箋を出して薬を受け取る。抗生物質(antibiotics)の入ったものをもらっているが、それは感染症を防ぐため?

 

著者のアランナ・コリンはマレーシアのジャングルでダニにかまれ、熱帯病の治療で長期間に渡る抗生物質の投与を経た後に、体調を崩してしまう。

人間の体内の微生物の生態系が崩れるとどうなるのか? 自閉症患者の治療に微生物がどう作用するのか? 文明社会に無縁の原始生活者の体内微生物の組成は我々とどう違うのか? 他人の糞便を取り込んで治療・治癒するのは医学的にどこまで解明されているのか? などなどを実体験や事例調査、さまざまな研究結果をまとめた科学ルポタージュ。

 

自然分娩と帝王切開との出産方法の違いが生まれてくる子供のその後の健康にどのくらい差が出るのか、母乳で育てるのがなぜ子供によいのか、など伝統的な子育てが実は科学的な裏づけがあることがわかる。

 

 

【著者が取り組んでいる・取り組もうとしていること】

 ・自分の中の微生物を満足させるため、食物繊維の摂取量を増やす

 ・出産は自然分娩を選択するが、帝王切開になった時は、あること(※1をする

 ・母乳で育てる

 ・抗生物質は本当に必要な時以外は摂取しない

 

抗菌物質や抗菌効果のあるXXなど、製造メーカの無意味な宣伝に惑わされているだけ、と気付かされる。農作物や家畜など薬漬けの食品を摂取しつづけているのが、どれだけ微生物本来の働きを妨げているのだろう。

 

医学や生理学、生物学の研究で明らかになってきた人間の体内微生物の役割について、実例や検証がやさしくまとめられている。

 

(※1:膣の微生物を赤ん坊へ塗布する)

(2016.10.30)

 

ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、そしてぼく

- マッドチェスター・ムーブメント、ハシエンダ文化史 -

 


UKニュー・オーダーのボーカル、ギター、エレクトロニクス担当、

バーナード・サムナーの自伝。

1956年、UKマンチェスター生まれ、61歳、1976年結成の

ジョイ・ディヴィジョンから40年、今もコンスタントにアルバムを

リリースしているマッドチェスターのバンドはニュー・オーダーだけ

になってしまった。

 

ワールドカップのイングランド代表の応援歌を手掛けたり、大規模な

フェスティバルのヘッドライナーを務めることができるバンドに成長

したのは、ジョイ・ディヴィジョン時代の遺産だけでなく、彼自身が

優れたコンポンザーであり、エレクトリック・サウンドメーカーであ

った証拠である。歌唱力とギター演奏は、ほぼ素人の域を出ていない

のではあるが。


マンチェスターの労働者階級で、決して恵まれた少年時代でなかった

バーニーは1976年6月4日、友人のピーター・フックとセックス

ピストルズのギグを観て衝撃を受けバンドを始める。


ボーカリストを募集して、イギー・ポップ、ヴェルヴェット・アンダ

ーグラウンドが好きという、イアン・カーティスを仲間に入れた。

翌年、ドラマーにスティーブ・モリスが加わり、パズルが完成した。

 

他の3人で曲を作り、イアンが歌詞を書くというやり方で、ジョイ・

ディヴィジョンは次々に曲を作りライブを行なった。結果、79年に

「アンノウン・プレジャーズ」をリリースし注目を集めた。


80年3月よりセカンドアルバム「クローサー」の製作に着手、同年

4月にジョイ・ディヴィジョン最大のヒット曲「ラヴ・ウィル・テア・

アス・アパート」発表、5月18日イアン・カーティス自殺。

7月「クローサー」をリリース。

 

残された3人はバンドを続ける決断をし、ジョイ・ディヴィジョン

の曲はやらないことにした。ジョイ・ディヴィジョンの遺産を捨て、

自分たちでヴォーカルをやることにした。その後ニューヨークの

クラブシーンに触れ、ダンスビート、エレクトロニックを取り入れた。

また、バーニーがシンガーとして歌と演奏に問題があったので、

ジリアン・ギルバートが加わり「ニュー・オーダー」となり2000

年まで4人で続けていく。


83年の「ブルー・マンデー」は最も売れた12インチ・シングルと

なり、所属する「ファクトリー・レコード」もマンチェスターの音楽シ

ーンの一大ムーブメントに発展する。レコード会社が経営するクラブ

ハシエンダ」はシーンの中心となり、やがて制御の利かない経営難に

陥っていくことになる。

このあたりは映画「24アワー・パーティー・ピープル」に詳しい。

ニュー・オーダー関連の他の映画としてイアン・カーティスの伝記

映画「コントロール」がある。

 

93年の「リパブリック」をリリースした後、バンドは長い冬眠に入り

各自のソロ活動に専念する。98年、長年連れ添ったマネージャーの

死をきっかけに再集結しレディング・フェスティバルでライブを行なう。

この頃から、ジョイ・ディヴィジョンの曲をやるようになる。


その後もアルバム制作を行うが2001年ジリアン・ギルバート脱退

(~2011年復帰)、2007年ピーター・フック脱退(解散宣言?)

その後メンバー追加し、現在に至る。

 

初期の作品はジョイ・ディヴィジョンに通じる陰鬱さが残っていたが、

85年の「ロウ・ライフ」から「ブラザーフッド」「テクニーク」、

~93年の「リパブリック」までに、バンド活動が軌道に乗り、メンバ

各自が困難を乗越え自信を付け、活動を楽しんでいく成長がよくわかる。


フッキーのリードベースと、バーニーの落ち着かないヴォーカルが

この時期のバンドのカラーを決定付けたといえるだろう。

 

現在はギター&エレクトリックサウンドのコンビネーションぴったり

の安定感のあるバンドになっているが、仲直りして80~90年頃の

荒々しいフッキーのベース演奏が聴けないかと、切望するのみである。

 

(2016.01.11)

 

 

ヒップの極意 EMINENT HIPSTERS

- デュークス・オブ・セプテンバー・ツアーの苦労話 -

 

 

Voice of Steely Danドナルド・フェイゲンの自伝的エッセイ。

1948年生まれ、ニュージャージー州出身、ベビーブーマー世代。


低俗なTV番組にうんざりし、ヘンリー・マンシーニ、SF雑誌に

影響を受け、12,3歳の頃からニューヨークのジャズ・クラブに

通い始めて、マイルス・デイビスソニー・ロリンズコルトレーン

のステージに接し、70年代末までビル・エバンスはいつも最高だっ

たと回想している。映画にも造詣が深く、1989年のエンリオ・

モリコーネのインタビューも載せている。

 

学生時代の友人、ウォルター・ベッカーと曲作りを始めてから、

ポップ・ソングを売り歩くようになるが、演奏活動の方はあまり

成功しなかった。三人目のスティーリー・ダン、ゲイリー・カッツと

出会ってから転機が訪れ、デビューアルバムからのシングルカットが

あっという間にヒットして順調にレコードセールスを伸ばしていった。

 

一旦成功してしまうと、バンドの中心だった2人は嫌いだったツアー

からだんだん距離をおくようになり、メンバーは次々と辞めていった。

1970年代最後のツアーメンバーはレコーディングに参加していた

マイケル・マクドナルドジェフ・ポーカロがいた。

 

1993年、新作発表無しでツアーが再開されたが、たぶん2人それ

ぞれのソロ作をセールスするため。 

 

2010年にそのマイケル・マクドナルドボズ・スキャッグス

「デュークス・オブ・セプテンバー・リズム・レビュー」バンドを

結成し、全米ツアーを行う。その時の様子がエッセイ後半を占める。

 

キャリア的にも音楽性でも、フェイゲンがバンドリーダ、レビュー

責任者のポジションであり、決して状態の良くない会場の音響や、

当人たちのヒット曲目当てでカバー曲をやる悪態をついて席を立つ

短気で飢えた聴衆、狭くてカビ臭い楽屋、決して一流とはいえない

ホテルのプールでのスイミングなど、急性ツアー障害(ATD)を

発症するに至る顛末がシニカルに、誇大妄想症的に描かれている。

 

マネージャーにツアー待遇へ愚痴をこぼすと「じゃスティーリー・

ダンでツアーをしてくれ。宣伝取材やTV出演を断ってるんだから

大きなホールは埋まらないし低予算は仕方ない」とたしなめられる。

 

小銭を稼ぐため一週間程度なら我慢して日本ツアーしてもよいとこぼす。

(実際に2012年に来日している。)日本は島国でイギリスと同じか、

それ以上の極端な文化、堅苦しい礼儀作法、決して「ノー」と言わない

あらゆる種類のあいまい表現を示すエピソードをはさんである。要一読。

 

1970年代の終わりに発表されたスティーリー・ダンの傑作「Aja」

から30年、決してツアーをせず、ライブで再現するつもりもなかった

と思うが、2010年になって嫌いだったツアーを始め、日本にも来た。

当時最もHIPと思った曲「Peg」のバックボーカルを務めたマイケル

マクドナルドが参加した、苦労と笑いと歓喜のツアー回想だ。


Youtubeで観られる演奏で、結構楽しんでいる風もあるが、フェイゲン

の書く難解な歌詞と同じく、行間を読んで想像を広げたり、当人以外に

理解し難い表現が多く、翻訳じゃ十分伝わってこないのではないか?

 

近年スティーリー・ダン名義の新作はなく、ソロ作をリリースしているが

もう低予算ツアーは沢山だと考えているか、また大きなツアーに出たいか

本人の気持ちは知る由もないが、若い頃にもっとツアー経験をつんでおく

べきだった、ときっと思っているだろう。

 

(2015.12.13)

 

 

 

  

 

40歳からは食べてはいけない 病気になる食べもの

-日本国民全体で人体実験に参加しているようなものだ-

 

 

人口減少、高齢化の時代、「食事の質」を変えることが「人生の質」を高める

最も確実な方法である。毎日摂る食事が、身体の修復機能を働かせる作用を

もたらすことを強く気づかせてくれる。それを妨げる、口に入れてはいけない

食べ物を取り上げている。中には根拠の無い説明もあるが、総じて主張している

テーマは、工業生産品のようなプロセスで作られた加工食品を食べるのを止め、

昔からの家庭料理や先人の知恵がつまった発酵食品を見直そう、といった所か。

 

第1章 5人に1人は糖尿病という国


糖尿病の患者数は3億8千万人、世界人口の8.3%にあたる。

かつては「ぜいたく病」と呼ばれていたが近年はそうでなく、むしろ

貧困層に多い病気である。これには大きく3つの原因がある。


 1)白い悪魔の三兄弟

 2)トランス脂肪酸

 3)クロム不足


1)の白い悪魔の三兄弟」とは何か? ヒントは加工精製されることで

不純物を取り除いて白さが増したもの。精製した不純物と言っても本当は

体に必要な要素が入っているのを食べやすさや見た目の理由から、無理に

除外したのである。正解は文末#1

 

 

第2章 砂糖の呪縛


白い悪魔の三兄弟を取り込むと急激に血糖値が上がり、糖尿病の原因になる。

糖尿病で死亡した人は、2010年の発表では1年間で13万人、しかも

その78%は低所得国で発生している。つまり貧乏な国ほど糖分過多、過剰

摂取が死因の多くを占める。

甘いものを食べたい、という欲求はほとんどがビタミンC不足のサインである。

よって生野菜や芋などからビタミンCを補ってやれば、欲求は収まる。

人工甘味料はカロリー0をうたっているが、身体の中で分解されず蓄積され

やがて肝臓、腎臓の機能を衰えさせていく。

低炭水化物ダイエットが最近注目されているが、健康を損ねる恐れがあり、

タンパクの摂取量が増えることで癌発生の要因が増えることになる。

 

 

第3章 安心できない加工食品と添加物


「あなたが何を食べているか言ってごらん。そうしたらあなたがどんな人か

当てて見せよう」といったのは、誰? 答は文末#2

身体の質を低下させている要因の物質の代表的な例が、トランス脂肪酸である。

身体に必要な脂肪酸はオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸である。これらを

必須脂肪酸と呼ぶ。この代替に使われるのが、トランス脂肪酸である。

先進国ではトランス脂肪酸の摂取量に規制をかけているが、日本では国際的な

基準量を超えたトランス脂肪酸を摂取しているのだ。

他にもグルタミン酸ナトリウムなどの化学調味料の過剰摂取も身体に大きな

負担を与えている。

 

第4章 満腹だけど栄養不足


身体が必要としている栄養素は2つのカテゴリーがある。必須栄養素と植物栄養素

である。両方を満遍なく過不足なく摂取することで正常な身体を保つことができる。

しかし、加工食品には必須栄養素も植物栄養素もほとんど含まれていない。

自分が食べているものが、加工食品の比率が高ければ身体に危険が迫っていると

認識したほうがいい。

 


第5章 油を選んで老化現象を遅らせる


摂りたい油として、オメガ3、オメガ6を1対4ぐらいが望ましい。

オメガ3の油は○○○油、○○油、オメガ6の油は○○油、○○○油、○○油が

ある。答は文末#3

オメガ9の油は、オリーブオイル、アボカドオイル、椿油である。オメガ油は

いずれも常温で液体であるが、バター、チーズ、ラードなど動物由来の油は

飽和脂肪酸と呼ばれ、常温で固体である。よって体内で固まりやすく、動脈硬化

を促進するので摂取量を控えたい油である。3章で取り上げたトランス脂肪酸

絶対に摂ってはいけない油である。

酸化した油は、過酸化脂質と呼ばれ、ノネナールという加齢臭の原因物質と言われ

ている。揚げ物は過酸化脂肪まみれである。どうしても揚げ物が欲しければ、

オリーブオイルを使うといいだろう。

 


第6章 塩にまつわる常識の嘘と本当


減塩、塩分ひかえめが推奨されているが、本当の塩をきちんと選んで使うことは

大切である。伝統的な自然製法で作られた塩と、今の化学精製塩は別物である。

海水からニガリ成分を取り除いた、自然塩には理想的なミネラルがバランス良く

含まれている。

 

 

第7章 DNAは変われない


戦後70年を経過して日本人の食生活が劇的に変化した。食肉の消費が増大し、

動物性たんぱく質の摂取が増えると同時に動物性脂肪も大量に摂取するように

なった。それ以前の日本の食生活は、どんな献立だったのだろう。

病気にならない理想的な食事は「元禄時代以前の日本人の食事」と評価された

ことがあるが、主食は精製されていない穀物、主菜、副菜は豆類、季節の野菜、

海藻、魚介類という内容である。

 

 

第8章 ファストフードで自滅の道へ


以前ハンバーガー1個の価格を下げた時、全体の売上が大幅に増え大きな利益を

生み出したがこのところ売上が落ちている。消費者の購買欲求が減った今、ファ

ストフードの収益モデルが成立しなくなっている。

「安ければ安いほどよい」というところから、健康によい良質のものを求めるよう

になってきている。多くの人が自分の食事のスタイルを変え健康を保つことを望

んでいるのだ。

 

 


回答#1

白い悪魔の三兄弟」とは

 ①白米・・・玄米から胚芽を取り除き精米したもの。

       胚芽にはビタミン、ミネラルなどの栄養素が含まれる

 ②小麦粉・・白米と同じく、小麦から表皮、胚芽、胚乳などを取り除いて

       挽砕したもの

 ③砂糖・・・サトウキビなどの原料から不純物を取り除き再結晶化

       したもの

 

回答#2

「あなたが何を食べているか言ってごらん。そうしたらあなたがどんな人か

当てて見せよう」といったのは、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン。

『美味礼賛』の著者で食通としても有名な18-19世紀のフランスの政治家。

 

回答#3

 オメガ3の油:亜麻仁油、エゴマ

 オメガ6の油:菜種油、コーン油、紅花油

 

(2015.12.08)

 

人類を変えた素晴らしき10の材料

-人類文化論、鋼鉄からチョコレートまで-

 

 

今回も科学エッセイ。著者の生活、人生における材料とのかかわりを、

それぞれのテーマ毎、全10章+1章にちりばめた、読み応えのある

人類文化論。文明の発展を経て定番の材料から、20世紀も半ばを

過ぎての発明品まで幅広く選んでいる。現代建築の基礎となっている

コンクリートから、人工器官として次世代に花開くであろう素材まで

を著者の視点、着眼点が材料科学の成果を興味深く伝えてくれる。

 


第1章 頑強・・・文明を変えた強くしなやかな「鋼鉄」


金属の発見は人類の歴史の重要な出来事だった。石器時代を終わらせて銅器、

青銅器から鉄器へと合金がどんどん強くなっていった。さらに製鋼の技術を

極めた日本刀が生まれ、15世紀から20世紀の間は史上最高の品質であった。

20世紀に入るとステンレス鋼が金属から腐食を遠ざけ、我々に食器の味を

味わわなくて済むようにした。

 


第2章 信用・・・記憶や愛を刻印する「紙」


中国四大発明の一つされる紙の発明から二千年、記録媒体の寿命で今後紙を

超えるものがあるのか不明である。デジタル時代の高密度記憶媒体である

磁気テープ、光学ディスク、紙に比べたらまだ赤ちゃん程度の歴史である。

 


第3章 基礎・・・社会の土台として進化する「コンクリート


コンクリートの発明はローマ帝国時代に遡る。ローマのパンテオンは2000年の

歴史のある世界最大の無筋コンクリートドームである。その後1000年以上、

コンクリートの建物は建てられなかった。産業革命を経て鋼鉄で強化された、

いわゆる鉄筋コンクリートの登場で、曲げ応力とひび防止により史上最も用途の

多い建材となった。

 

第4章 美味・・・「チョコレート」の秘密


チョコレート独特の食感は、ココアバターという最高の油脂が生み出している。

個体として保存できるが、体温で溶け液体となるということだ。口の中で溶ける

濃厚な脂肪に融けた糖分が放たれ、アルカロイドやフェノールと呼ばれる化学物質

が苦味や渋味をもたらすのである。それらを味蕾で感じるのでなく、多くは嗅覚で

味わっている。アルコールや煙草のように、もしチョコレートが有害で常習性あり、

となったら人類の幸福度は少し下がるかもしれない。

 


第5章 驚嘆・・・空間のかけらを生む「フォーム(泡)」


本章で触れられる「フォーム(泡)」は他の材料と比べ馴染みが薄いかもしれない。

ゼラチン状の個体から液体を抜取り、代わりに気体に置換え骨格が崩れないように

したもの、これが1930年代に発明されたエアロゲルである。宇宙探査に貢献する

世界最高の断熱材、ほとんどの人は一生手にする機会がないものらしい。

 


第6章 想像・・・映画も音楽も「プラスチック」のおかげ


大抵の人はポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)の違いはわからないと

思うが、水の沸騰温度(100℃)に耐えるのがポリプロピレン(PP)である。

例としてコンビニのお弁当ケースがポリプロピレン(PP)で、それを入れる袋は、

大概がポリエチレン(PE)である。

 


第7章 不可視・・・なぜ「ガラス」は透明なのか


昔の鏡は金属面を極限まで磨き上げる必要があった。日本で古墳文化期以前の鏡と

呼ばれる埋蔵物は、現代において金属の腐食や傷により機能は全く失われている。

ローマ人はガラスの層を加えることによって金属部分の厚みを薄くすることで

寿命を延ばすことを発見した。一方19世紀まで東洋にはガラス技術がなかった。

このことが望遠鏡や顕微鏡の発明が出来ず、西洋文明に大きく水を空けられる

理由となったといっても過言ではない。

 


第8章 不可壊・・・「グラファイト」から世界一薄く強固な物質へ


ダイヤモンドを反応する空気の無い状態、真空中で熱するとどうなるか?

黒鉛、すなわち鉛筆の芯になる。グラファイトをダイヤモンドに戻すには

高温と高圧が必要である。しかしグラファイトを紡いで繊維状にすることで

強度と硬度をもたらす発明が生まれた。現代テニスでカーボングラファイト

の材料以外のラケットを持つチャンピオンは出てこないだろう。

 


第9章 洗練・・・技術と芸術が融合した「磁器」


陶器と磁器の違いは何か? どちらも一定の強度と硬度があり食器や鉢壺瓶

などの容器として使われる。しかし陶器は多孔質の材料を使って作るため、

傷や水分の染み込みがある。陶器に釉薬を塗っても内部の穴からひび割れが

起こる。一方磁器は特殊な粘土がガラス状になって内部の隙間を埋め尽くし

表面をコーティングし薄くて丈夫な器になる。西洋では中国から遅れること

1000年以上、牛の骨灰を混ぜてようやく磁器がつくられることとなった。

よって「ボーンチャイナ」は地元の材料で作った独自の磁器である。

 


第10章 不死・・・98歳でサッカーを楽しむ「インプラント」の私


インプラントとは、歯の治療のみならず体内に埋め込まれる器具の総称。

これから先、人間の寿命を延ばすことと、寿命を迎えるまでずっと健康

なままで生活することが医療の目的になる。人体に拒絶されない材料が

多く見つかり、いろんな器官の置換が行われることで実現できるだろう。

 


第11章 人工・・・材料科学の未来


地球上の材料はさまざまな実体が組み合わさっていて、その基本は全て

原子から成り立っている。原子からナノ、ミクロ、マクロ、ミニチュア、

人間へとスケールを変えて捉えるマルチスケール構造を発見したことが

材料科学の成果である。

 

 

(2015.11.29)

 

地球の履歴書

 


-現代科学が解明する、地球46億年の生い立ち-

 

 

 

 

地球の歴史を科学の目で紹介した全8章のサイエンスエッセイ。

科学の発展によって、地球の謎やさまざまな未知の領域は徐々に

解明されてきた。地球創世記の月の関係から、田沢湖の絶滅種の

話までサイエンティストが、雑誌連載記事よりまとめている。

 

第一章 How Deep is the Ocean?


Jazzのクラシックのタイトルを挙げるなら、How High The Moon も

この章で触れられた内容である。45億年前の出来立ての月は地球から

わずか2万km、見た目の大きさは今の20倍近くの大きさで、どんなに

目障りになっていたことだろう。 How Big The Moon!.

 


第二章 謎を解く鍵は海底に落ちていた


日本の松山教授の地磁気の逆転現象の観測結果や、ウェゲナーの

大陸移動説からのプレート・テクニクス理論。またダーウィン

サンゴ礁の成り立ちの考えは発表時は仮説の域で評価は定まらず

その証明は更なる技術革新の登場を待たなければならなかった。

 


第三章 海底が見える時代


現在の世界地図や地球儀には詳細な海底の地形図が記されている。

深海深くの栓を抜いて海水を抜いて実地測量したかのような精度だ。

これは第二次大戦で発達した技術が戦後に広まったことによる恩恵、

サイドスキャン・ソナーとシー・ビームである。広範囲な地形を

測定し、高速にデータ処理できるコンピュータの発達がもたらした

革新である。

 

第四章 秋吉台ミケランジェロ、石油


石灰岩、セメント、石油。いずれも白亜紀の大量の微生物の遺産で

今の我々は多くの恩恵を得ている。白亜紀温室効果の真っ盛りで

今より多様な生物の大繁殖、繁栄期だった。そしてその繁栄は巨大

隕石の衝突によって終焉した、とされている。

 


第五章 南極の不思議


南極大陸の詳細が判ってきたのはこの百年程度のことである。極地

探検隊が両極を目指し多くの犠牲を出し、その中で競争に勝利した

ノルウェーのアムンセンが人類最初の到達者の称号を受けた。

現在の南極は、夏には2千人を超える人が暮らす「町」があり、

当時の上陸地点を極点を結ぶ1600kmの間はブルドーザが走る「道」

が結んでいる。

 


第六章 海と陸が出会う場所


氷河期が過ぎ、陸地と海面の境界は徐々に替わってきた。現在は間氷

期で海面が最も高い時期にあたる。しかし干拓により住居可能な土地

を広げることが出来るのは大陸に沿って浅瀬、いわゆる大陸棚があり、

海岸沿いの平野は沖積平野が広がっているからだ。地球の長い歴史の

サイクルでは、我々の済む地域の大部分は、海底と陸地のどちらかの

状態を繰り返しているところになる。

 


第七章 塩の惑星


人類の生存に欠かせないもの、また経済や文化の発展に大きな影響を

与えたものが「塩」である。日本では古来より海水を煮詰めて、干す

製法がほとんどであるが、他の大陸では岩塩を採集している。地中海

近辺で良質の岩塩が採れるのは、過去に何度も干上がり、海水が流入

することを繰り返し、地殻変動により隆起したものである。

 


第八章 地下からの手紙


近くに火山が無いにも関わらず、高温の湯を1000年以上も湧出し続ける

有馬温泉は「奇妙な例外」である。太平洋から水源を得て、地下かなり

深いところを通じて、ウランからエネルギーを得て高温で表出している

と考えられている。

 

(2015.11.15)

 

「身体」を忘れた日本人

-自然に囲まれた生活。これからの日本人の生き方のススメ-

 

 

養老孟司 × CWニコルの対談集、全七章。

自然が与える人々の暮らしへの恩恵、または近代~高度経済成長期の

環境破壊が引き起こした様々な問題について、2人の対談を全7章に

まとめている。机上の空論でなく、環境活動、実体験による様々な

苦言、提言が詰まっている。官僚や自治体職員らを相手に「バカと

付き合う暇はない」と嘆くニコル氏。研究畑だけでなく昆虫収集家

として森に分け入り、生態系の破壊に警鐘を鳴らす養老先生。

 


第一章 森と川と海のこと


長野県の天然記念物の木曽馬を森の中で働かせようとか、10年

ぐらいマグロは禁漁にしようとか、ユニークな提言だ。

 

第二章 食べること、住まうこと


田舎で暮らすことのメリット。その土地固有の食べ物を食べたり

そこの森で採れた木材で家を建てる。都会の画一的な暮らしに比べ

変化のある生活は重要だ。定住がダメなら休暇の間だけ暮らすの

も良い。欧米みたいに会社でも官庁でも一か月ぐらい強制的に休み

をとらせてはどうか。大賛成、すぐやりましょう、って経営者は

いないのか?

 

第三章 子供たちと教育のこと


子供を育てるのはちゃんとした施設でなく自然の中で「ほったらかし」

でよい。勝手に学び、生きた知識を身につける。

 

第四章 虫のこと、動物のこと


キリンの首はなぜ長い、に解剖学者の養老先生の真面目な答え。

生き物の形態は、できちゃったからしょうがないっていうことらしい。

 

第五章 五感のこと、意識のこと


五感を鍛えることの重要性。自然の中では傷んだもののにおいで食べれる

食べれないを判断しないと生き残れない。意識の話はかなり難しい。

 

第六章 聞くこと、話すこと


ネットで調べてわかったことと、外に出て自然に接して経験したこと

とは根本的に違う。わからないことがあるということを留保して、

謙虚にならないといけない。

 

第七章 これからの日本のこと


私たち日本人がこの先どうしたらよいか。ニコル氏は「自然から離れないで

ください」といい、養老先生も「自然に触れてほしい」という。

本の森と川と海は本当にひどい状態だと。

 

 

(2015.11.03)